劇場版まどかマギカ[新編]感想 /願いは尊いという話

 

■ 連休後の平日、やっと見に行く

・ネタバレ回避したかったし事前情報はおろか公式サイトすら見ずに行った

・装丁がすてきという噂のパンフレット、当然在庫切れ。よってこの感想は設定やら作品情報やらなしでファーストインプレッションのまま殴り書きしている

・平日夜を狙ったので来場者プレゼントも当然在庫切れだったけどフィルムの切れ端とかいらんから両側に人のいない余裕ある席で見たかったのでよし(友達いないパーソンはそばに人がいると手がふるえるので)

・でもあとで情報見て色紙はちょっとほしかったなって思いました

・レイトショー、開場十五分くらい前にいったら自分しか待ってなくてめっちゃ楽しみにしてる人みたいになって困惑

・しだいにぼちぼちと人がくる。うつむき気味に次々とやってくる寡黙なオタク青年たち、生まれる無言の連帯感

・なかよしオタ大学生風男子三人組がはしゃぎつつやってきて苦いものが走る

・そのすぐうしろをなかよしおしゃれ女子二人組がキャラメルポップコーンとか持ちつつやってきて苦いものおかわり

・やめろ! わたしの前で友情のすばらしさを見せるな!

 

※以下ネタバレ注意

 

 

 

■ 本編上映までわりと長かった

・上映前の諸注意をタイガー&バニー、物語シリーズ、映画泥棒と三種類にわたって見せられ食傷気味に

物語シリーズ見たことないしあんまり見る気もないので困惑

・とち狂ってゆのっちに注意させればよかったのに。ゆのさんはまんがタイムきららのエースじゃけえ

・劇場の注意で「ネタバレには配慮しようね」って言い出したのにはこういう時代なんだなーって思って自分の加齢臭を嗅いだ気分に

 


■ 開始五分で観客の心をつかむための戦闘シーン

・さやかちゃんかわいい&かっこいい!

鹿目まどかちゃんはいつでもかわいいですね

・黄色パイセン、ドヤ顔で登場

・舞台劇風に全体的に戯画というかイメージ化してておまえによし、おれによし

 

 

■ 第1話をなぞってるねって観客を喜ばせる日常シーン開始

・OP映像でみんなが季節に応じていろんな服装になったりしてるところで嬉しくなる。アニメキャラが作中でいろんな服に着替えたり髪型変えたりおしゃれするのがすごく好きなんです。TVアニメとか毎回服を変えてほしい

・しれっとマスコットポジションを陣取る屁理屈耳毛野郎に早くも怒りボルテージがMAXに

・いちゃつく赤&青、困る鹿目まどかちゃん。三人組の中でふたりだけでいちゃつくのやめろ、いやな記憶が甦る

・和子先生、クビにしよう

・サイコな電波ちゃんこと暁美ほむら、三つ編みめがねにドヤ顔をトッピングして登場

・他人の優位に立つ機会を見逃さない狡猾な黄色パイセン。ドッキリばっかりしてると嫌われるからやめたほうがいいですよ

 

 

■ 仁美ちゃん出番あってよかったね

・ちょっと勇気出して「大好きです」って言ってくれたんやし「僕も好きだよ」の一言くらい言えやって思ったけど中学二年生の男子にそこまで求めるのは酷というもの

・枕に昇竜拳かます仁美ちゃんかわいい

 

 

■ ナイトメアなのかナイテメアなのか

・チーズ野郎がマスコットぶってるの、個人的にはファンに媚びやがってという気がしてあんまり嬉しくない

・ファンアートとかで巴マミさんと一緒に描かれてるの、当初はある意味まどかマギカらしいブラックジョークだなって感じだったけどしだいに定番化してただの無神経な取り合わせになったって印象がある。言うても殺されてんねやで

・魔法でドリルヘアをセットする黄色パイセン。巴無駄魔法シリーズに新たな1ページが。魔女退治後のドヤ顔ティータイムとか見るとふだんからラリティ並に無駄魔法使いまくってやがるな

・魔法と女の子ってキーワードがあるだけですぐマイリトルポニーのこと考えるの、よくない

・一斉変身シーン、黄色パイセンのサーシャ・コーエンを彷彿とさせるような見事すぎるビールマンスピンに感動。でもその後のキメポーズはエレーネ・ゲデヴァニシヴィリっぽかった(主に胸のせい)

佐倉杏子さんの変身シーン、なんか不穏

・さやかちゃんの変身シーンはかっこよくてかわいい。走ってるのかわいい! 一瞬人魚の泡のようなものがうつるのがせつない

鹿目まどかちゃん、かわいい&かわいい

・メガネの子については特にコメントないです

 

・ユニット名、誰が名前を考えたのとか考えてはいけない

・みんながかっこよく攻撃するシーン、いつもモノ食ってる女がウィダーインゼリーくわえてるの見てこいつまたモノ食ってるよと思いました

鹿目まどかちゃんと巴マミさんが協力攻撃してるシーン見て、やっぱりあの病院のときからずっとこのふたりが仲良く手を取り合ってがんばってるシーンが見たかったんだな、よかったなってせつなくなる。なんならこのふたりだけで戦い続ける物語もありですねっていうくらい(実際そういうときもあったけど)。まどマミの組み合わせは優しい世界。ホームランちゃんはすみませんが永遠の時の回廊を走り続けてください

・丸テーブルで歌あそびっぽいものをするシーン、こういうのすごく好みなので嬉しくてしかたなかった。変身シーンもそうだけどなんかミュージカルというか舞台劇っぽい演出多くていいですね

・やられたのちゆっくりと化す仁美ちゃんを見てまたなんかおもしろおかしく言われるんだろうな、かわいそうだなーと思いました

 

 

■ やっぱり漂う「言うてもどうせ仮初めの世界なんやろ」感

・教室で一部以外みんなもやもやな顔になるシーン、鹿目まどかさんたちや上条・仁美カップルに混ざって中沢くんもちゃんとした顔だったのに笑った。認識されてる!

・何かがおかしいと気づいた暁美ホームランちゃんが最初に頼るのが佐倉杏子ちゃんという構図、今回に限らず二次創作界隈まで広く流布されている気がするけど、思いきりオタクのくせにヤンキーに最初に頼るとは心底アウトローやなって思う。でもクラスの中心にいそうなさやかちゃんにはいけないよね、黄色パイセンに相談すると三時間くらいお話されたあげく何も参考になりませんでしたってなりそうだし。

・ものすごくかわいい鹿目まどかちゃんについては目の前に立つと頭がピンクに染まって脳が死ぬので当然除外

 

・例によっておしゃれなバスに「あんなおしゃれな公営バスねえよ」って思いそうになったけどあれを赤にしたようなやつが大洗町を走ってるなって思い直しました。駅前から乗れるよ。行こう幕末と明治の博物館

 

・わりと予想通りな展開のまま魔女の結界やろなー、魔女は暁美ほむらと世界一可愛いピンク髪の子のどっちかなーって観客の九割が思ってるんだろうなーって

 

・三角テーブルで当然のように鹿目まどかちゃんの隣を確保する暁美ほむら。笑顔が怖い。

・心情を吐露するパイセン、それを理解する言葉をかけるチーズきちがい。心温まるような悲しいようなというシーンですがそういうのはもうちょっとしまっとくべきで簡単に言葉にしちゃうもんじゃないんじゃないかなって思いました。まあ今が幸せだから素直に言えるってのはあるにしても。ほとんど好みの範疇ですけど

 

 

暁美ほむらvs巴マミ(こいつらいっつもケンカしてんな)

・物事を解決するのに最初に選ぶ選択肢が暴力という貫禄の暁美ほむら

・で、出たー! 肝心なときには役に立たないくせにそうでないときは無類の強さを見せる黄色パイセンのアリバイ的強さ証明シーンだーッ!

・まーた銃使いキャラがガンカタしとる

・情けをかけたあげくまた性懲りもなくリボンで締められる暁美ホームランちゃん、自分の能力の特性に戦術と思考を最適化した副作用かなんかわかんないけどナチュラルに他の面子を自分より下に見るクセ直したほうがいいですよ。なんだかんだで毎回巴マミさんにやられてるのは魔法少女としての才能の差とか以前の問題だと思う

・リボン分身の術というかあらかじめかけといたシールドというかで無傷とかほんと対人戦はつええなこのパイセンは。やっぱ昔は魔法少女同士の縄張り争いとかやってたんだろうな

 

・しかしなんだかんだ言ってすぐ暴力に走るの、このふたりが短気というよりは暴力という手段に手を染めた人間の一般的な性質って気がする。ひとたび暴力を手にした人間は暴力という解決手段に対する心理的障壁がものすごく低くなっちゃって安易にそれを選んでしまうようになるっていうか。こういうの見ると魔法少女はもう人間とは相容れないって絶望しちゃったさやかちゃんの考えもそう間違ってないよなーって思う

 

・でもやっぱ暁美ほむらの凶行にさほど動揺を見せないのは黄色パイセンてもともと根っこでほむらのこと嫌いな部分があったんじゃないかなって思う。孤独のつらさを知っていてそれゆえ仲間に依存してる部分があるからこそ、仲間の裏切りには激しく動揺しそうなもんなのに

・導き出される、いちばん最初のまどマミコンビの中にほむらが加わったときも正直迷惑だったんじゃないか疑惑。甘い世界じゃないから愛のムチとして厳しくすべきとは言え、新しい仲間の登場に辛辣な反応だったし。でもこれわたしが心のどこかでボーダーライン巴マミ爆誕を望んでいる(ひどい話だし醜い欲望だ)からそう思うだけかもですね

・上記のような認識があるせいもあると思うんだけど、巴マミに真実を告げるのがつらかったと独白するほむらの言葉にも軽いぜー超軽いぜーって思いました。いやぜんぜん嘘ではなく本心だとは思うんだけど、結局それだって俯瞰すれば些細なことにすぎずそんな思いも切り捨てられるのが暁美ほむらって人間て気がするので。だから頭でなく脚を撃つことを選んだシーンも優しさとか巴さんに対する気持ちとかじゃなく単に甘さとか侮りとか、あるいは今の心地好い世界に対する未練みたいなののほうを感じた

ゆのっち声の新キャラがしゃべりだした瞬間にやばい! ウザキャラだ! って思いました。阿澄佳奈がいるほうがひだまりスケッチ、いないほうがまどかマギカって覚え方してたのに一から覚え直しだよ!(頭がよくないなので)

 

 

■ まさかのクールさやかちゃん登場

・さやかちゃんがマジでかっこいい! お前誰だ!

・誰ださやかちゃんが弱いとか言ったの、時間停止対策もバッチリやんか

暁美ほむらが対人戦よええだけじゃねえかとか言ってはいけない。暁美ほむらちゃんは言葉の通じない相手にはめちゃ強いけどコミュニケーションできる相手には弱い子なんだから大目に見てあげて

・さやかちゃんに苦手意識のあるホームランちゃん視点だからしかたないけど(まどかさん以外にほむらが苦手意識を持ってない人間なんてあんまいないだろうという悲しい現実は考えるな)、一瞬さやかちゃんめちゃ怖くて邪悪に見えましたね

 

 

ヴェネツィア感あるゴンドラに鹿目まどかさん登場

鹿目まどかちゃんはいつでも可愛い。

・船に着地してバランスを崩したまどかさんに押し倒されるような形になった暁美ほむらちゃんが頬を染めてて、さっきまで人殺しの顔してたくせにホントどうしようもねえなこいつはって思いました

・でもほら、鹿目まどかちゃんは可愛いから

・「みんなと会えなくなるなんてさびしくてわたしには無理」という言葉を聞いてやっぱり止めなければいけなかったと思うほむら。でも自分の未来を知らない人間は結果的に嘘をつくものだから、これを彼女の真実そのままと受け取ってしまうのは危険ですよね。とはいえほむらはあの時も止めておくべきだったと思い、その後悔をなんとか抑えつけて新しい世界を守って生きていくと無理やり自分を納得させたという経緯があるから、そこで「本物の」まどかさんにこういうこと言われたらもうしょうがない。それにこの時点では間違いなくまどかさんの「本音」だったんだし

・まどかさんはあともう1回同じタイプの嘘をつく

・まどかさんの言葉はいつだって引き金を引いてきたというか、暁美ほむらに生涯続く呪いをかけてきた。でも娘を育てる母の言葉が呪いとなるように、離れられない二者間においては呪いをかけられる方こそが呪いを誘発し、自ら呪いを保ち維持し続けるのかも。

 

 

■ 魔女、ほむらだった

・ほむらちゃんには悪いけど魔女がまどかさんじゃなくてよかったって思ってしまいました。途中までまどか魔女の性質まんまみたいな結界だよなーって思っていたので。ていうか明らかにミスディレクション狙ってたよね

・だって自身の存在すらなくした選択とその結果から生まれた永遠の孤独に耐えられなくなって魔女になったなんてことになったら悲しすぎる、鹿目まどかの強さだけがこの作品の唯一といっていいほどの救いなのに

・「すべてあなたのしわざだったのねインキュベーター」とか言い出した瞬間においおい責任転嫁かインキュベーター陰謀説信者かって思っちゃったけどマジだったので暁美ほむらさんすみませんでした

・屁理屈耳毛野郎がマスコット面してるのに耐えかねていたので、しゃべりだした瞬間にほーらやっぱり! とひとり脳内で鬼の首とってた。個人的にTV最終話でちゃっかりマスコット面してこれからは共生だねみたいな雰囲気になってたのも納得いかなかったしコイツらをつけあがらせるなって思ってたので

暁美ほむら悪い方向に覚醒(悪い方向ってこれより上があったのかよ)

・都合の悪い質問には沈黙する耳毛野郎に激怒する暁美ほむら。いいぞもっとやれ

彼岸花が咲いたあたりからホントつらくなりだす。自分はあまり暁美ほむらちゃんに感情移入するほうではなかったけど目から下しかない顔を見た瞬間に悲しくて悲しくてしかたなくなった

・願いの代償を受けるのが魔法少女という一見正しそうに思える自己責任の論理は奴隷道徳というか率直に言ってクソでしかないし、希望を願ったからって呪いを引き受ける必要なんてどこにもない、それを体現しようとしたのが他でもない鹿目まどかじゃないかって思っているので、いつまでたっても自己責任の檻から脱け出せないでいるほむらに本当に悲しくなる

・まあ希望のすばらしさを信じそれを証明するためにまどかがすべてを投げ出したのに魔法少女はやっぱり最終的にこの世から消えなくてはならなくて呪いもこの世からなくなりはしないってのを体験してるからそう思っちゃうのもしかたないのかもしれないけど

 

 

■ 円環の理、三人だった

・さ、さ、さやかちゃんだー!

・チーズ、お前は座ってろ(ほんとうは嫌いじゃないです)

・さやかちゃんが魔女の力を出したの、ファンが一度は妄想したような展開で見てて燃えたけど一方で安易にこういうのやってほしくはなかったなって思いもする

・あとまだ孵化の段階だし通常の魔女化とちがって特殊環境化だしってちゃんとした理由はたくさんあるんだけど、それでも魔女の中に元の人格があってそれを取り戻すことができるってのをやられると繰り返されたオクタヴィアの悲劇はなんだったんだろうってちょっと思っちゃう。理屈の上では矛盾もなにもなくてちゃんと整合性とれてるんだけど、こう感情的な部分で

・しかし今回黄色パイセン全体的にあんま取り乱さなかった。やっぱり常に仲間がいる状況だったし。拝啓プリンセスセレスティア、友情の魔法はやっぱりすごくすごいです

・やったー、魔法少女大勝利! やっぱり希望を願う心は世界を救うんだー!

・結界が解けて鹿目家や上流階級カップルや先生やらが現実世界に戻ってくるシーンで中沢くんは? って思ったけどこれ映ったら映ったで笑いにしかならないので出なくてよかった

 

 

■ まどかさんお迎え

アルティメットまどか、神々しいのはいいんだけど、概念になっちゃうことの何が悲劇かって、自分の個体としての存在つまり自我とかがすべてなくなってとけてしまうということだと思うので、たとえこの世界と切り離されてしまうとしても自我を保っている姿にはちょっと疑問。なんか概念になったことの悲劇や選択の重みが薄れちゃうんじゃ……。いや個人的にはそんなもんなくたって鹿目まどかさんがちょっとでも幸せならそのほうがいいし整合性や代償クソくらえではあるんですけど

・緑の象を見てガネーシャとかのせいもあるけどこういうときに出てくる動物として象ってぴったりだし象という動物の神聖性すごいって思う。人間が制御できない動物の代表格だから

・一瞬縮尺がわかんなくなってアルティメットまどかが観客に巨女フェチズムを植え付けるシーン? って思った

 

 

■ここから叛逆の物語が開始となります

暁美ほむらご乱心

・やっぱり希望が大勝利するわけなかったって感じだけど、これに「さすが虚淵wwww」とかいう反応をするのはなんかおきまりっていうかいいかげん茶番臭するし構造が完全に内輪のノリって感じして食傷気味なので、いやもうこの話はやめよう

・まどか以外のすべてを切り捨ててこそ暁美ほむらって感じだし「愛よ」とか邪悪な顔で言い出す暁美さん最高なのでこの展開はイエスですね

・チーズ子ちゃんが「呪いよりももっとおぞましい」って言い出したのがなぜか個人的にツボ入っちゃって「呪いよりももっとおぞましいでおなじみ、暁美ほむら」というフレーズが脳内で連呼

・まどかがすべてを投げ出して実現した円環の理システムだって結局は因果応報の鎖から逃れられなかった(そもそも誰かの犠牲の上で成り立つという時点で論ずるに値しないんだけど)んだし、それに甘んじて救われてよかったねってなってもそれはどこか本当の救いじゃないんじゃないかって気持ちはぬぐえないし、真っ向から叛逆した暁美ほむらは偉い

・でもほむらちゃんはやっぱり心のどこかですべてをあきらめている子なので、結局最後には自分のしたことの責任をとるときがやってくる、報いがやってくるって思っているふしがある。そんなん捨てちゃって自分を貫いてほしいのにとも思う

・さしずめ悪魔、とか言い出したシーン、なんかなんにでも名前をつけるのは陳腐になるからよくないねって感じた。言うなればってだけの、つまりは例えでしかない台詞なんだけど、こういうのは結局定着しちゃってあの状態は悪魔っていうものですよみたいになるから

・あっ、ここも純粋なアニメファンに巨女フェチズムを植え付けて性的まわり道をさせるシーンだ

 

 

■ ティータイム少女暁美ほむら

・さやかちゃんかっこいいけどせつない。

・上流階級カップルに対する反応とか見てると、円環の理に導かれる際に上条くんの演奏シーンを見たことで本当にふっきれたんだなって思うし、まどかさんはあのとき親友に本当にすべきことをしてあげたんだなって思ってちょっと救われた

百江なぎさちゃんが何もかも忘れて本当に本当に楽しそうにランドセル姿で走ってくシーン、予想される裏設定とか考えると(難病でずっと入院してて大好きなチーズを食べたくても食べられないとかそういう)せつなくてせつなくて思わずチーズきちがいとか言ってすみませんでしたってなる

・帰国子女まどかマギカ! 黄色いリボンは母のおすすめ!

・教室入ってきたときにおおーって歓声が上がったので鹿目まどかちゃんはやっぱり作品世界内でもいちおう美少女扱いなんだろうか

・まったく似合ってないリボンをカチューシャ風につける暁美ほむらさん(呪いよりもおぞましいでおなじみ)がクラスのみんなに怖がられてそうで泣ける。暁美さんって文武両道でしっかりしてるけど正直なんか怖いよね、あっやっぱり? あたしもそう思ってた、べつに何かされたわけでもないしいい子なんだけどね、みたいな

・でも表情怖いもん。そんなん真実を直感的に見抜くことに定評のある鋭いさやかちゃんじゃなくてもわかるよ。リボン似合ってないし。

・リボン似合ってない暁美さんに連れ回される転校生を誰か助けてあげてほしい。でもこの状態だとさやかちゃんと親友じゃないのかもしれないのか……。大元の設定でも小学校のころ転入してきたってなってるみたいだし、この改変世界だとそもそもその出会い自体リボン似合ってない暁美さんによってなかったことにされているのかもしれない。ひどい。ストップザ独占欲、やめよう心理的DV

・もはやおなじみとなったサイコな電波ちゃんが突拍子もないこと言い出すシーンですが、「欲望よりも秩序を選ぶ」というのはむしろ鹿目まどかさんの性質の真逆だと思う。メンタル強いみたいに思われがちだけど実は因果応報を受け入れて静かに絶望しゆるやかな自殺の生を生きそしてそのまま死んだ佐倉杏子や、それが魔法少女の運命と言い続けて心を殺して自我を保った暁美ほむらみたいに、理不尽すぎてそのままでは耐えられない不幸を因果応報という理屈で無理矢理納得した(それができない子は死ぬか魔女になるかしていった)なかで、ただひとりそれに真っ向からぶつかりすべての少女たちの願いを肯定したのが鹿目まどかなんだから。個人的に「未来を知らない人間が結果的につくことになる嘘」のふたつめだと思った。

・「いつか敵になる(そして自分はいつか報いを受ける、今はそれでもいいからこの世界を生きていたい)」という暁美ほむらの台詞は本当に暁美ほむらの甘さや弱さを象徴するよう。もちろん弱いからって悪いなんてことあるわけないし選択自体は個人的には全肯定したいですが。最後には報いを受けるということをあらかじめ受け入れているからこそ開き直れるんだと思うし。それなしで開き直れる人間は本当に稀有な存在であり、作品タイトルを冠する主人公でもない限りできやしない。

・そういうわけもあって安易に「魔法少女まどか☆マギカの主人公は暁美ほむら」という意見にわたしは反対です。間違いなく狂言回しではあるけれど。

・「やっぱりあなたの方がこのリボン似合う」はあっやっぱ自覚あったんですねって思いました

 

 

■ 他の人たち

・改変された世界でのさやかちゃんと佐倉杏子ちゃんのシーン、まーたモノ食ってるよこいつはって思う。でも杏子ちゃんがいつもモノ食ってるのはハードボイルド的記号って以上に欠食児童だった反動でいつもお腹を満たしていないと不安になるっていう強迫的な衝動のせいなのでしかたない。戦時中食べ物に困ったおじいちゃんみたいなものだから

・マミさんが倒れるチーズの箱からなぎさちゃんを助けようとするの、やっぱりこの二人でセットにされてくんだな、いっつも五人で一人余るとか言われてたのに対する解決法ってこれなのかって思っちゃってちょっと複雑。いや百江なぎさちゃんに対してはランドセルシーンのおかげでもうほんとうに幸せになってほしいという気持ちしかないんですけど

 

 

■ エンディングとエピローグ

・エンディングテーマ、「どこにもいかないで」連呼がなんともいえない

・露悪的に笑う暁美ほむらは虚勢まるだしで見ててちょっとだけ悲しい。心の底から開き直って幸せだし何が悪いって言ってくれたら悲しさなんてなかったけど

・ぼろぼろの屁理屈白毛野郎の瞳を大写しにすることでこのままでは終わらない感出したりインキュベーターの逆襲を予感させたりするのやめろ

・黄色パイセンばっかり言われるけど暁美ほむらも負けず劣らず調子に乗りやすいというかうかれやすいというか(さやかちゃんはちょっとベクトル違う)、全般的にこの子はすぐ力におぼれちゃうよねって思う。体育で無意味に県内記録更新したりするホームランちゃんの心理を思うと……

・続編作れる終わり方っていうかふつうにあるんじゃねって感じですけど、ここで終わってもそれはそれでいい。ほむらちゃんの選んだ道自体は肯定されていいと思うし、やっぱそれじゃダメなんじゃって思いはふんだんに匂わされた報いの予兆が回収してくれている

・まどかさんは願いをかなえるために人間をやめたけど、そもそもすべての人を愛するとかすべての希望を肯定するということが人間をやめるということなのであり、ある意味では必然だった。でも人間をやめたからってすぐ神様になれるかといったらそうではなくて、「さびしいけれど」という大きな犠牲がいる。ほむらちゃんはそのアガペーにも似た無限の愛が犠牲の上に成り立っていることが我慢できなくて(その広すぎる愛の前では自分も平等なワンオブゼムでしかないのが耐えられなかったのでは、というのも否定出来ない)、まどかさんを神の座からひきずりおろした。このへん、ユダがイエスに対する愛憎入り混じった思いを独白する短編「駈込み訴え」(太宰治)を思い出しました

・意志と選択にこそ価値があり、願いは尊いというのがこの物語だと思う

 

 

■ 映画たのしかったです

・戯画化されたイメージ先行演出あり、ハードな魔法銃撃戦ありと、劇場公開という形式のスケールに負けない力の入った映像で楽しかったです

・偏見かもしれないけどファンサービス満載で、インターネットやらで万人の感想が否応にもフィードバックされる時代の作品て感じもしました。そんなの耳にタコができるというかホントいまさらだしまどかマギカに限ったことじゃないけど。べつにそれがイヤとかじゃなくて、据わりが悪く感じた部分もあるけど結局しっかりその部分も楽しんだし

・できるだけネタバレ回避したけど「衝撃だった」とかそういうとにかく驚かされますよ! みたいな煽りの空気がネット上に蔓延していたので変な構えができちゃって劇場出てきて呆然とかそういう感じではなかった。でも驚かせたりどんでん返ししたりするのだけが物語の価値ではないし、そういうのは言ってしまえばかくし芸程度の意味しかなくて、むしろ見たあとでふとした瞬間にその物語のことを考えている……みたいなほうにこそ価値があると個人的には思っているのでよし

・やっぱりパンフレットほしかったな

 

 

2014/7/27 一部表現修正