日記/潮の匂いはしない・鮫よ、鮫よ・白鷺が飛んでいた・セミの腹・残暑はさびしい

 

8月某日/

 済まさなければならない用事などもあってかなり久々に実家へ。やたら木や草や花が増えていた。ブラックベリーが大量になっていて、かなりうらやましい。青じそやバジルもあった。いいな。

 実家といっても自分が家を出てから引っ越した場所なので、実際に住んだ経験はなく、どこか知らないよそのおうちみたいな感覚がある。電話とかトイレとかお風呂とか、その他もろもろ慣れないものばかり。そもそも家を出てるんだからよそのおうち以外の何物でもないという言い方だってできるんだけど。

 関西よりだいぶ涼しいと聞いていたんだけど、それでも今年はかなり暑いらしい。わりと海の近くだけど、潮の匂いはしない。セミの声はよく聴こえる。

 

8月某日/

 近隣の海でサメが出る。鮫。よく来たね。

 すぐ網を張ってガードしたらしく、素早い対応のかいあってか他のサメ出没地域より早く海水浴場を再開したらしい。町内放送で言ってた。

 最初は2匹とか言ってたのが日ごと増えて16匹とかになってて、因幡の白兎のおはなしを思い出した。一族を集めているんだろうか。それとも誰かが舟でカジキを引っ張ってきたか。

 鮫よ、鮫よ!

 

8月某日/

 庭に白鷺が飛んでいたので写真を撮った。京都の家の近くでも、川に白鷺がやってきているのをたまに見る。

 

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8月某日/

 実家に来てからずっと日がな家にこもっていて、特にどこにも出かけていない。友達とかもいないし。海が近くにあるのに行ってない。ヘタすると見てすらいない。いや電車の中で見たかも。

 こまごまとした事務処理やら用事やらで少し外に出たけど、それくらい。あとの空き時間は網戸にはりついたセミの腹を眺めたり、アスファルトの隙間からひょっこり咲いた百合を眺めたり、ちょろちょろ動くメダカの鉢を眺めたりするだけである。

 食材や調味料が豊富な家で料理をするのは楽しい。普段使えないもの、べつの何かで代用しているものも、わんさか使い放題である。快楽だ。

 家の中に自分以外の人間がいて寝起きしているという生活はひさしぶりなのだけど、なんかこう、自分はあんまり人と話すの向いてないなあと思う。人と話すというか人と過ごすのが、だろうか。でも多かれ少なかれみんなそういう部分があって、その上で社会生活を営んでいる、向いていないとかじゃなくてやる気がないだけだろう……みたいな話はすぐ思い浮かぶけど、楽しくないのでやめよう。何を考えようと、もはや砂の城のようなものである。

 

8月某日/

 実家から京都に戻ってくる。夜行バスはいいかげんしんどい。でも車が苦手な自分にとっては、窓が前も周囲も全部カーテンで閉ざされているのがありがたい。実家で車に乗る機会があったんだけど、けっこうなスピードで走るそれにあらかじめ自分で思っていたよりずっと恐怖を覚えたので、本格的に車だめなんだなと再確認した。

 最高気温36度などと猛威をふるった夏も終わりが近づいている。暑い暑いとさんざん文句を言うくせに、なぜだか残暑はさびしい。毎年のことだ。

 時が循環してくれることが嬉しい。信頼というものの基礎がそこにある。多少のずれはあったとしても。