日記/わがまま言える・たぬきのゴネ得・こども大人・音の中で

 

12月31日/

 年越しそばとお雑煮のためにスーパーに鶏肉を買いに行く。年始休み直前なのでお野菜や肉魚、おそうざいなどが半額になっていて、四方八方から半額! 半額! という声を浴びせられてくらくらする。心が弱いので余計なものまで買ってしまった。

 東で育ったせいか昔はうどんよりそばを食べる機会が多く、はっきり言ってそばのほうが好きだったけど、西に住み始めてからはめっきり食べなくなった。うどんばかりだ。うどんの方が安いというのもあるかも。あと焼きうどんとかもできるし、買っておくと楽。

 ひさびさのおそばはおいしい。そば湯もじんわり温かくて、落ち着いた夜だなあといい気分になれる。大みそかというのはクリスマスとかよりずっとひとりを意識する場面が多い日だけど、自分はこういうふうにゆっくりできる年越しが好きだ。自分に対してならいくらでもわがまま言えるし。

 大きな神社さんやお寺さんが近いので、家にいても二年参り客や誘導の声が聞こえてきて、耳だけ混雑の中にいるようだ。何をするでもなくネットを見ていたら外でワーッて歓声のようなものがあがって、時計を見たら日付が変わっていた。

 

1月1日/

 だらだら本を読んでちょっとだけ眠って、朝ちょっと早い時間に起きる。顔を洗ったら近所のほこらというか社というか、とにかくそういう小さいかみさまのところで初詣。数年前から毎年ここだ。近所のべつの神社はとても大きく、なんだか気後れしてしまう。

 ここは「たぬきが悪さをして困るので祀ってあげたらいたずらがやんだ」という謂れのあるほこらで、そういういかにも昔話的なたぬきのゴネ得感が好ましく、前を通るたびにお参りしている。たぬきのはずなのにおきつねさんの像があって、でも稲荷社でもないようで、しかも実はたぬき以前からあったっぽいけど詳しいことはわからなくて、とにかく謎というかテキトー感がただよう。そこが好きです。

 お正月になったのではばかることなくおもちを食べまくる。実家からおもちと干しいもを送ってもらえて、まさに「越せる! 冬」。おもちが本当に好きで……好きで……ウウ、本当に(きりがないので省略します)。

 とりあえず朝は関東風のお雑煮(すまし汁っぽいかつおだしの醤油味)で食べて、お昼はたがねもちを磯辺焼きにして、おまけに大みそかに半額で買ったぶりのアラで作ったぶり大根を食べたりもして、これから先にぜんざい作って食べる予定もあるし、ハーもうこんなにお腹いっぱいでいいのかよ。おもちイズおいしい以外に書く必要ないですね。いやおもちイズおいしさイズコモンセンスなのでそれすら書く必要ないのでは。終わります。あっ、あと雪降ってたよ。

 

1月某日/

 年明け最初の銭湯は人が多め。雪で冷え込んだから気持ちよくて、結局二時間くらい入っていた。

 凍結した道路を小学生がやるみたいに靴の裏すべらせて遊びながら歩いてる男の人を帰り道で見かける。広げようこども大人の輪。

 珍しく大雪が降ったから、外を歩くとそこかしこに雪だるまがいて、まるで道祖神のようだった。京都はそこかしこにお地蔵さんが祀られているからよくなじんでいる。お正月が終わると集まった親戚が帰っていくみたいに、この雪だるまたちもじきにとけて消えていく。

 雪の多い地域に住んでいたことがあったのでそんなに雪にハシャぐ感じではないんだけど、でもなにか不思議になつかしいような気持ちになる。

 

1月某日/

 日差しを浴びて雪がじわじわとける、水滴が一定のリズムで規則的に落ちる、屋根からどさりと雪が落ちる。そういう音の中で図書館から借りてきた本を読んで過ごす。

 自分は同じ小説や漫画を何度も読み返す。たいていは好きなシーンを何度も反芻して楽しむような感じ。これはなんていうか、お気に入りの公園に行って過ごすようなもので、そういう好きだったり落ち着いたりうきうきしたりする場所にひたる・体験する・時間を過ごすという感覚に似ている。好きなBGMをかけるとかそういうのにも似てるかも。おもしろいっていうより(いやおもしろいんだけど)楽しいとか嬉しいみたいな。

 娯楽の少ない家で育って、幼いころは親戚のお下がりでもらった漫画を何度も読み返してたから、そういう経験も関係あるのかもしれない。

 小さい子とかってけっこうかたくななところがあって、お気に入りのビデオを何度もえんえんと見るみたいな話を聞くけど、そういうのちょっとわかる。