日記/おいなりさん・気付いたら山・挑むような
十月某日/
ひさびさにおいなりさんを食べたので嬉しい。しかも刻んだ茎わさびが入ってるやつ。嬉しさが倍。
柚子やら麻の実やらごぼうやらが入ってたり、ごまやら刻んだ大葉が混ぜてあったり、はては五目だったり、ひと手間かけたおいなりさんはほんと嬉しい。もちろんおいしいけどおいしい以上に嬉しい。プレーンのも好きだけど。
十月某日/
散歩していたらなんとなく調子が良くて、気付いたら山を歩いていた。京都は宅地からちょっと入るとすぐ山だったりする。ヘタすると繁華街からもすぐだ。本当に山に囲まれているんだなあと思う。
一応ちゃんとした山道で、つまりトレッキングコース的なやつで、黙々と歩いて行けば山頂に着く。途中いわくありげな洞穴にお地蔵さんがいたりして、わりと飽きない。
山頂はちょっとした公園になっていた(東屋的なのがある程度だけど)。麓のお寺の飛地境内でお堂があり、山の向こう側からつながる自動車道もある。やたら広い駐車場もあった。
後で調べたらそれなりに有名な夜景スポットだったらしい。めちゃ近所なのに知らなかった。ほんとになんも知らん。
駐車場の脇には「飼えないからって捨てないで」というコピーの動物遺棄防止啓発ポスターが貼られていた。だいぶ色あせてはいるが、寂しげな猫が佇む写真だ。山奥だから捨てに来る人も少なくないんだろう(といっても展望を意識した山頂だから見晴らしよく開けてるけど)。
傑作だったのは、そのポスターのそばに4、5匹ほど猫がたむろっていることだった。秋の日差しを受けて気持ちよさそうに眠っていた。毛の色が似ていたから兄弟か親子かかもしれない。かなりリラックスしていた。ていうか傑作だったとか言っていいのだろうか。まあいいや。
駐車場には麓からお堂までのシャトルバスっぽいのが止まっていて、運転手さんがのんびり煙草を吸っていたり、誘導の警備員さんがいたりする。山頂からの景色を楽しみに来たらしい人もいる。猫たちはこういう人たちに餌をもらっているんだろう。
伏見稲荷の稲荷山の山頂で横に「禁煙」と紙がはられた煙草の自販機を見たときのことを思い出した。
いや、真面目なこと言うたらいろいろあるんだと思うしあんま茶化してる場合でもないような気もするんですけど、でもなんか。なんか。へんなのーって。ウォウ~。
十月某日/
出先で書き物をするためにファーストフードチェーンに入った。
レジの前には先客がいて、なにかクレームをつけていた。べつにたちの悪いお客さんという感じではなくて、たぶんまっとうな、というと変だけど、まあふつうのクレームだったんだろうと思う。特に聞き取ろうという気はなくてなんとなくメニューを眺めていたら耳に入った程度だからよくはわからないけれど。
自分の番になった。店員さんは高校生くらいの女性で、たぶん研修中とかの新人のアルバイトさんだ。挑むような顔つきだった。
といってもべつに挑むとかそういうのではなくて、きっとしんどかったり泣きそうになったりをこらえるとそういう表情になるタイプなんだと思う。自分を奮い立たせるというか。気丈な顔という言い方もできる。
そういうしっかりした顔をしていたけど、やっぱりさっきの動揺があったのか、わりと対応がぼろぼろだった。自分も何かあると頭の中が真っ白になったりするタイプなので、ちょっと胸が痛みつつがんばれーがんばれーと心の中で勝手に応援してしまう。結局彼女は終始挑むような顔つきで対応を終え、また次のお客さんに挑んでいった。
なぜかあの挑むような表情がとても印象に残っている。説教されているときに泣きそうになるのをこらえたら不満そうな顔をしていると取られてしまって更に怒りを買う、みたいな損な目に遭うタイプかもしれない。でもきちんと自分を強く持とうというあの感じは尊いなあというか、えらいなあと思う。
正直美しいとも思ったけど、こんなふうに思うのは失礼かもしれない。なんか感じ悪いかも。本人は必死でやってるだろうし、自分のそういうところ気に入ってないかもわからんのに、よう知らん客にこんなふうに勝手にいろいろ思われるのいやかもなあ。ごめんなさい。
いらん想像力ばっかり働く。