日記/ジルベール感ある・取り戻せ季節感・おかしいものは

 

11月某日/

 実家が送ってくれた野菜の中にオータムポエムというのがあって、ずいぶん気合の入った名前だなと思ったらアスパラ菜なのだった。「サカタのタネ」という種苗会社の販売名らしい。ジルベール感ある名前。

 この手の新品種のネーミングというのはなんかいろいろひねった感じというか大げさだったりえらいロマンティックだったりしておもしろい。お米とかサツマイモとかでもいろいろありますよね。ちょっと茶化した言い方をしてしまったけど、でも実際、海外のお酒のネーミングとかもセンス的には大差ないんだろう。こういうのは歴史的な背景とか開発中のエピソードとかにちなんだ名前をつけられると何か不思議な権威で納得させられてしまう気がする。

 食べた感じはクセのない菜の花という感じ。湯がいた茎がほんのり甘くて、からし和えとかが美味しいと思う。

 

11月某日/

 オオサンショウウオのオオさん・ショウさんが府立図書館に来るらしいので時間を合わせて行った。ちょうど予約していた本が確保できたと連絡も入っていたので受け取りがてら。

 オオさん・ショウさんというのは京都水族館のキャラクターで、ほぼ全身茶色のきぐるみである。実際行ってみると図書館前の銀杏並木のあたりで珍妙な動きをしていた。小さい子供がぽかーんとした顔で見ていたのが印象的だった。あと思ってたより背が低い。

 図書館エントランスの傘置きとかがあるスペースで待ち構えているのを予想していたので、わりと逃げ場ない感じだろうし写真とか撮らせてもらおうかなと思っていたのだけど、実際は開けた場所にいたので横目で見ながら通りすぎてしまった。予算がない感じが可愛かったし、写真撮らせてもらえばよかったかもしれない。

 外はだいぶ寒くて、コートとかジャンパーを羽織っている人が多かった。あっという間に秋を越えて冬の気配すらある。まだ紅葉全盛過ぎてないけど。でもなんか十年くらい前と比べて紅葉が1、2ヶ月くらい後ろにずれ込んでる気もするし、季節はよくわかんないな。

 季節に応じて適切な服装をするのが苦手なので、こういう境界期は外に出るのに神経を使う。なんでみんなちゃんとできるんだろう(&ちゃんとできてなくても堂々としていられるんだろう)。そういう能力ほしい。取り戻せ季節感。

 

11月某日/

 ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』(柴田元幸訳、早川書房、2007)を読んでいる。

「妖精のハンドバッグ」も「ザ・ホルトラク」も、どこか悲しい。直接失うわけじゃないんだけどあらかじめ欠けていたりいつのまにかなくなっていたり、そういう喪失や欠落の穴を風が吹き抜けていくような悲しさと滑稽さを感じる。 おかしいものは悲しい。