『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』感想/どきどきして、わくわくして、それが魔法

 

■ 原作ファンです、見てきたので感想を書きます

・もともと原作(ひらりん『のろい屋しまい』、『のろい屋姉妹 ヨヨとネネ』上下、いずれも徳間書店リュウコミックス)のファンなので、かなり原作視点の入った感想になります

・とはいえ映画そのものをとても楽しく見られたので、原作どうこうで文句を言うみたいなのは少ないと思います

・よかったよ! みんな見に行こう!

 

 

■ 舞台挨拶回だった

・『のろい屋しまい』の映画、今日公開だーと思って公式サイトを調べたところ、直近の映画館では公開してなかった。やっぱりけいおんやらまどかやら(そして日曜朝系とかポケモンとか)と違ってアニメ映画ってこういうのがふつうですよね。がんばってほしい

・映画館のサイトを調べたら明日舞台挨拶回があるらしいと知り、まあもうチケットないやろと思ってネット予約見てみたら「空席じゅうぶんあります」的な表示が。がんばってほしい

・行ってから気づいたんですけど、そもそもこの日コミケだったんですね。それを考えるとこの日の客入りはむしろ健闘したほうなのでは

・舞台挨拶自体についてはおそらく他の人が書くんじゃないかなーと思うし特に書かないです

 

 

■ グッズ全然ない

・ちょっと早めに着いたのでグッズコーナーを見たけどなんにもなくてビビる。パンフレットも一瞬ないと思ったけど端っこのほうにありました。あと主題歌CDがあるだけ。ビハクのぬいぐるみとかのろい屋チラシ風ノートとかほうきストラップとかちょっとだけ期待してたけど。がんばってほしい

・でもテレビアニメがあったわけじゃないし小規模でがんばるぞーってタイプの劇場アニメだと思うので口コミとかなんかの間違いで子供向けにヒットとかそういうふうになったらいいな

 

 

■ お子さまのお客さまが!

・魔女っこアニメだけど、もともと子供向けってわけちゃうし舞台挨拶やし、お子さんはいないだろう……と思っていたら斜め前に親子連れが! ほかにもあと二組くらいいて(みんな女の子だった)なぜか心配になる

・ちゃんとお子さん楽しんでくれるのかなと勝手にハラハラして最初集中できなかった。我ながらこういうお前がする必要ねーよその心配はっていらん心配をするあたり気持ち悪いですね

・いや、まどかみたいに子供には向かないって感じじゃないしトレーラー見た感じいけるとは思ったんだけど、オタの思う「子供や非オタにもいける!」って感覚はズレてることが多いので

・以前なぜか非オタの人と細田守監督の話になったとき「あの人の映画ってオタクくさいよね」って言われてひゅおってなった記憶がよみがえる

 

※以下ネタバレ注意

 

 

 

 

■ ヨヨさんが動く! 飛ぶ! 魔法を使う!

・とにかく画面がにぎやかな映画で、それを象徴するのがヨヨさんの魔法シーン

・異世界=現代日本にやってきたヨヨさんがなんやかんやで魔法を使いまくる

・魔法のほうきのかわりに消火器に乗って飛んだり、壊した家を華麗に修理(+アレンジ)したり

・この作品では魔法を使うとき(主に)空中に魔法陣を描くんだけど、その魔法陣がいちいち可愛いしわりと直感的なデザインですてき。ニコニコマークだったり、そのものずばりゾウさんだったり。これBlu-rayとかになったらひとつずつ確認したい

・現代日本で惜しげもなく魔法を使いまくるヨヨさんがいい。呪いを証明するために孝洋をペンギン面にしたり、孝洋を懲らしめるために雑巾にして絞って悪い心をデトックスしたり。相手の姿を変えちゃうの、童話とか絵本の中の魔法使いって感じがして好き

・中華街にどかんとコースをぶち建てて魔法式ジェットスケボーで突っ走ったり、魔法使いだってバレたらとか隠さなきゃとかそういう感がまったくない大物感が気持ちいい。魔法使いの映画は魔法を使ってナンボですよ!

・魔法以外にもキャラクターのアクションが派手で、せわしないくらいに派手に動いていたという感じ。妙に落下シーンが多いような気がした。空中でほうきに追いつこうとする動きとか、ころころ変わってホント表情豊かなヨヨさんの顔とか、見てて気持ちいい

・キャラクター以外でも、建物だとか植物だとかメカだとかが、とにかくダイナミックな画で押してくる

・原作はひとコマの情報量が多くて、例えば勝手に動いて逃げる家とか見づらい部分もあったけど(そこが何度も読み返したりしてじっくり見る漫画って感じでいいところでもあるんだけど)、アニメで見るとまた印象が変わる

・細かくてわくわくする要素たっぷりの背景も魅力の漫画なので、それが高クオリティで描かれてうれしい。ここらへん劇場アニメの強みというか、テレビアニメじゃなくて劇場アニメになって正解だったのかもと思う

 

 

■ ヨヨさんが! 歌って! 踊る!

・呪いの調査をしていたら小学校で健生孝洋兄弟の親戚である亜紀ちゃんに会い、転んで泣き出す亜紀ちゃんに慌てるヨヨさんのシーン。亜紀ちゃんの泣く表情がアニメ! って感じというか(おそろしい説明ベタ)、最近こういう表情流行り?

・そこで! なぐさめるために! ヨヨさんが! 歌って!! 踊る!!

・ヨヨさんのおうたのシーンでひとり大歓喜。個人的にマイリトルポニーとかディズニーアニメ、きんいろモザイクの影響でアニメのキャラクターがミュージカル風に歌って踊るシーンが大好きなので。アニメキャラがミュージカル風に歌うアニメは名作

・ヨヨさんかわいい! かわいい! かわいい!!

・ヨヨさんが鮮やかに魔法を使いながら歌って踊るんだけど、アニメだからこそできるミュージカルというか、ぽんぽんぽんってカボチャが飛び出したり木が盛り上がったり花が咲いたりで楽しくて、最後にはそれらの植物で亜紀ちゃんの顔ができて、すごくすごくすてきなシーンなんですよ!

・たとえば風船で次々に犬やらなんやらを作っていくバルーンアートの大道芸人さんとかって、子供心にふわあーって夢中になるし、それこそまるで魔法みたいで見ててすごくわくわくするじゃないですか。あれを本物の魔法で鮮やかにやってくれて、そりゃ亜紀ちゃんも目を輝かせるよね

・正直、このシーンだけでも観に来た価値があったと思いました

・あとこのシーンの前にヨヨさんが鏡を見ながら魔法でぽんぽんいろんな服装になっていくシーンもすっごく可愛かった。アニメキャラが色々な服に着替えるの好きなので

 

 

■ ヨヨさん、小学生くらいの大きさに

・最初は肉体年齢6歳だったヨヨさんが異世界に飛ばされるときに大きく(小学生くらいに?)なって、以降ほぼ全編にわたってこの姿で通すんだけど、これわりと思い切ったなーと思う

・小学生男子の孝洋との淡い恋とか、ある程度手足が長いほうが画面で動きが映えるとか、ヨヨさんの心の成長を描くにはこのくらいの身体のほうが説得力あるとか、そういった事情があってこうしたんだろうけど、これ他の原作付きアニメだったら原作ファンに賛否両論なのでは(いやもしかしたらこの映画もそうかもしれないけど)

・ただ、ヨヨさんは原作でも魔法の暴走などでたびたび大人の姿になったりしているので、そのせいもあって個人的にあまり違和感なかったです

・そもそも6歳のときから12年間氷漬けになってたから実年齢18歳で精神年齢低め、実力は魔女の中でも有数というアンバランスなキャラクターなので

・冒頭の小さいヨヨさんが一生懸命ちょこちょこコミカルに動く姿も本当に可愛かったし、手足の伸びたヨヨさんが派手なアクションする姿はかっこよくてチャーミングだし、個人的には両方よし

・走りだしたけど急に身体が成長したせいで靴が合わなくて転ぶってシーン、身体感覚を意識しててよかった。欲を言えば急に伸びた手足に微妙に混乱して徐々に馴染んでいくとかも見たかったけど、これは完全に個人的な好みですね

 

 

■ 「魔女っこ姉妹」だけどヨヨさんの成長物語

・物語は異世界(現代日本)に飛ばされたヨヨさんを中心に進んでいく

・姉妹は異世界でがんばるヨヨさん&魔の国からサポートするネネちゃんという構図になり、実質的にはヨヨさんがひとりで主役を張る感じに

・タイトル「魔女っこ姉妹」なのに……という感じがしないでもないけど、『のろい屋しまい』が二人の話で『のろい屋姉妹 ヨヨとネネ』がネネちゃんのお話だったので、『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』はヨヨさんのお話、と考えるとわりとしっくり来る

・映画的にも、ヨヨさんをひとり主役に据えることで、異世界からやってきた魔女っこが明るく楽しくがんばり大切な何かに気づいて成長する、という王道なお話になって座りがいいのかも

・ただ、ヨヨさんが帰ってこられないとなったあとのネネちゃんが……。ネネちゃんは自分が3歳のときにヨヨさんが氷漬けになってしまって、それから12年間ずっとヨヨさんを取り戻すためにがんばってきたという過去があり、彼女にとってヨヨさんとの別離は一種のトラウマだからすごくかわいそう

・最後のほうでヨヨさんが永遠に帰ってこられなくなるとなったときも、ネネちゃんは泣いて(その世界を見捨ててでも)今すぐ帰ってきて! と訴えて、かなりせつない

・ネネちゃんがヨヨさんを心配してる描写があるたびに原作のママさんみたいに「大丈夫だよ! ヨヨさんは33歳で世界を征服するって予言されてるんだから、それまでに戻ってくるよ!」って励ましてあげたくなった

 

 

■ 生と死

・今回の映画はヨヨさんの成長物語で、その成長のキーとなるのが「生と死」を知ること

・死んでしまっても魔法で蘇らせることができるので「死んでしまうこと」がわからないヨヨさん。でも異世界での経験を通して生と死を知り、そのかけがえのなさを守るためにがんばる。そしてがんばる過程の中で、魔法は単に魔法が使えるってだけじゃなくて、誰かのための幸せをかなえるために必死にがんばったときに成し遂げられるもの、みたいなのが示される

・死に対する感覚の違い、あの世界でも魔の国の人(というか魔女)以外はそれなりに死をヤバいと思ってるし(象を落とされたときのニルスとか、ネネちゃんの子供のころのほうき練習に付き合ったときのパパさんとか)、さすがにトラックに轢かれそうになった子供を助けてもらった母親が泣いてお礼を言うのにポカーンはないんじゃとちょっと思った

・ヨヨさんはのろい屋の依頼にすぐ殺しちゃいましょうって言うし、ニルスも魔法の検証とかで殺されかけたし、魔女の人たちはすぐ戦争しようとするし、という感じ で「人を殺す(人が死ぬ)」ことをわりと軽くとらえてるってのは間違いないんだけど、それでも危ない目に遭った人を助けてもらってお礼を言うってのは理解できると思うしポカーンはないと思うんですよ

・いや後々につながるヨヨさん(というか魔の国の人の価値観)を示すために必要なシーンだとは思うんだけど。それにここはあくまで伏線ていうか、におわせてあとにつなげるシーンだし

・死に対するズレはお祭りのあとのシーンではっきり示される。花火のあと人々が次々にモンスター化しパニック、さらに建物消失現象が起きて、ヨヨさんは空から状況把握、でも亜紀ちゃんが大変だったのにどこ行ってたんだよ、というところ。「死んじゃうかもしれなかったんだぞ」と怒る孝洋に「死んだら生き返らせればいい」と返すヨヨさん

・中華街のときよりはっきりわりと自然な感じで死に対する感覚の違いが示されてたと思う

・その後、瓦礫の下敷きになって動かなくなったビハクを蘇らせようとするものの蘇らず、泣くヨヨさん。雨に打たれるわ飛ぶ魔法がうまくいかなくて傷だらけになるわで痛々しかった

・ここに限らずなにげにこの映画は痛そうなシーンが多いんだけど、ほとんど傷跡として残らないので一種のギャグというか動きを出して画面をにぎやかにするものとして成り立っている。でもここではヨヨさんが本当にボロボロになるので痛々しくて見てられないし、わかりやすく「そういう」シーンなんだなと示されていた

細田守版『時をかける少女』でも似たような感じだった。始終ごろごろ転がって頭とか打ってるわりに平気そうなんだけど、終盤の坂のシーンでは血が出るあざになるで本当に痛そうで、身体の怪我の深刻さ以上に状況のヤバさが伝わってきたという

・ビハクは救急隊員さんによって蘇生、「まるで魔法みたいです!」と喜ぶヨヨさんに救急隊員さんは「魔法だとしたらあきらめなかったお嬢ちゃんが起こしたんだよ」と返す

・わりとよくある感じのシーンなんだけど、ビハクがよみがえって喜ぶヨヨさんに周りの人たちもよかったねーって集まってきて傘をさしてあげたりするところで泣いてしまった

・「死んでしまう」ということを実感として理解したそのあと、向かった先の病院で新生児室とか今まさに生まれた赤ちゃんとかを見て今度は「生」を知る

・知る……んだけど、わりとパッと短く済まされてしまった感じ。そういう意味のあるシーンなんだなというのは伝わったけど、もうちょっとヨヨさんの中での実感が伝わってくる何かがほしかった

・原作(『のろい屋姉妹 ヨヨとネネ』上)でヨヨさんは妹のネネちゃんに「ネネちゃんとはじめて会ったとき ネネちゃんはこーんなに小さかったです」「それがハイハイして立ち上がって 笑って 喋って いつの間にかこんなに大きくなったです」「ネネちゃんは大きくなる天才です」と言っている(夢の中だけど)。だから妹のネネちゃんの誕生を通して生に関しては実感があると思う。なので例えば新生児室の赤ちゃんを見てネネちゃんが生まれたときの記憶を思い起こす……みたいな感じだったらもうちょっとわかりやすかったかも、とは思う

・でもそういうのなしであくまで「この世界のもの」として生と死を印象づけたかったのかなーとも思うので、そういう意図があるならネネちゃんの記憶うんぬんは出てこなくて当たり前ですね

・それで建物消失が迫ってくるなか 、いま生まれたばかりの赤ちゃんや孝洋と亜紀ちゃんたちやらを含めてみんなのために全力の魔法で病院を守ろうとするヨヨさんはかっこよかった

 

 

■ 原作との大きな相違点、劇場アニメとしての『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』

・で、ヨヨさんが「死んでしまう」ということがわからないというの、お話としては世界の違いを示すとか、その後にヨヨさんが命のかけがえのなさに気づいてがんばるという王道な流れだし、それはいいと思うんだけど、一方で原作のあのあっけらかんとした感じとかちょっと毒のある感じとかは『のろい屋しまい』の大きな魅力のひとつだとも思うので、正統派エンターテイメントとしての劇場アニメにするためにわりと思い切ったなと感じた

・原作との相違点という意味ではヨヨさんの身体を成長させたというのよりもこっちのほうがずっと大きなポイントだと思う

・でもそれが悪いというわけじゃなくて、やっぱり劇場アニメにはそれなりのスケール感が必要になるし、真っ正面からエンタメに挑戦しようという意志もあっただろうし、それを原作の大きな特徴を角度を変えてクローズアップするという方法でアプローチしたっていうのはアリだなと思います

・劇場アニメとして、というのは前の項で挙げた「魔女っこ姉妹」だけどヨヨさんのお話になっていた、というのも同じ話になりますね

・原作ファンからこんなふうにつらつら相違点を挙げたけど、今回のお話はとても気持ちよく見られました。『宇宙ショーへようこそ』のときも感じたんだけど、深夜アニメとかをホームグラウンドにするスタッフがオリジナルアニメやマイナー原作アニメを劇場作品として作るときにエンターテイメントというものとがっぷり四つに組んで挑戦するというのはやっぱりとてもすばらしい、わくわくすることだと思う。大人も子供もわくわくどきどき明るく楽しめてちょっぴり涙したりもするアニメ映画! ってやっぱりすてき

・魔女っこ/魔法少女アニメってまどかマギカを挙げるまでもなく本当にずっとずっと前からある種の実験場になっていたフィールドだと思う。そこでがっちり腰を据えてエンターテイメントをやろうとした(そして魔法というものをわくわくどきどきするものとして描こうとした)ことは評価されていいんじゃないかなーと

・最後のみんな自分の欲望のために魔法を使うから魔法は呪いになってしまう→危機にひんしてみんなが誰かのために願う→ヨヨさんフルパワー! ってなる展開、言ってしまえばホントにベタベタだし例によって原作の感じとはちがうんだけど、やっぱり盛り上がるしちょっと泣いてしまいました

・この映画のセールスポイントはなんですかと考えるとき、間違いなく「みんなが憧れた魔法のドキドキ」になると思うので、そこに関しては本当に全力で突っ走ったと思う

 

 

■ それで、はたして子供向けだったのか

・子供向け(というか子供でも楽しめる)という雰囲気ただよってて、実際物語の構造自体はどストレートなんだけど、本当に子供向けかどうかはちょっと疑問

・いや子供が楽しめないってことは全然ないと思うし、わくわくするシーンたくさんなんだけど。でも、子供向け物語のわくわく感が好きな大人向けな気がしないでもない

・以前なぜか非オタの人と細田守監督の話になったとき「あの人の映画ってオタクくさいよね」って言われてひゅおってなった記憶があるのでこういうこと考えちゃう

・なんだろう、いわゆる「大人も子供も楽しめる」の正解として最も近いのは「子供向けに全力で作ったやつを見て子供は楽しいし大人もその王道な物語を楽しみつつクオリティの高さにうなる」みたいなのになるのかなあ。よう知らんけど

・やっぱり元の原作はぜんぜん子供向けじゃないし、そこらへんの設定やら雰囲気やらを活かそうとするとごちゃごちゃしちゃうのかも

・いやでもなんだかんだいっても子供じゃないから子供が何をおもしろいと思うかなんてわかんないな。わかんないのに憶測であれこれ言うのはしょーもないしやめよう。子供向けだったのか? とか言っときながら自分でハシゴ外してすみません

・ただ自分の子供のころとか思い出すと、物語とかはぜんぜん覚えてなくてもひとつでも強烈に印象が残ってるシーン、好きなシーンがあればそれはすてきなことだと思うんですよ。セーラームーンおジャ魔女プリキュアの変身バンクシーンとか。だからとにかく見てて楽しい魔法シーンがいっぱいのこの作品を見て、童話の中の魔法使いにあこがれたみたいな、わりと根源的な魔法へのあこがれみたいなのでふわあーってなったらそれはもう大成功だと思う




-----以下、その他こまごまとしたことを

■ 説明不足と多少の強引さ

・もともと細かな設定のある原作なんだけど、そのあたりは派手な画面と動きの説得力でカバー! って感じだった

・ただ、おヨネさんが「どうにかしないとそっちの世界に攻撃するぞ」ってシーンは強引で腑に落ちないって感じた人も多かったのでは

・実は個人的には原作読んでおヨネさんをとんでもない人と認識してたのでそこまで違和感を感じなかったんだけど(魔女っ娘として派遣された先の異世界をキレて宇宙ごと消滅させたとかそういう人なので)、まあふつうに映画だけ見てたら強引すぎる展開に感じるよなあと後から思いました

・危機感を出す効果はあったと思うんだけど、ヤバさを描写するだけなら建物消失したり次々モンスターになったりだけでも十分だったろうし

 

 

■ OPアニメーション

・原作『のろい屋しまい』の第0話でもあったようなしかけ絵本風のOPアニメーションがかわいい!

・飛び出したり、引っ張って動かしたり、魔法の世界のわくわく感としかけ絵本は親和性高い

・呪われたケーキ屋さんの娘さんネタ(『のろい屋しまい』第1話「ビックリシュークリームの呪い」)が描かれていて原作ファンには嬉しい

・これ実際の絵本にして商品化してくれたらすてきだろうなーと思います

・と思ってパンフレット見たら絵本が出てる!(『ヨヨとネネとかいじゅうのタネ』) あんな感じにしかけ絵本なのかどうかはわからないけどすてき!

・えーじゃあ原作漫画や絵本も劇場のグッズコーナーで売ってほしかったよー

 

 

■ カップ焼きそば

・孝洋特製「オレソバ」、カップ焼きそばマヨネーズとタバスコを大量に入れてぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べるというジャンクな感じ。でも組み合わせ的にはまずいわけないよね。監督が若くてお金ないときに食べてたそうです

・あまりのおいしさにヨヨさんも「目からおしるこです!」の評価。健生が「うろこじゃない?」って突っ込んでスルーされたあとカメラが切り替わるんだけど、そのあとのカットでも画面の左端のほうで「うろこじゃない?」って繰り返すところは笑ってしまった

・来場者プレゼントがまさかのカップ焼きそば。わーいってなったけどついもったいなくて、100均でべつのカップ焼きそば買って帰って映画と同じ食べ方しました。おいしかったよ

・個人的には、アニメ映画の来場者プレゼントってこれくらいが罪のない感じでちょうどいいと思う

 

 

■ お祭りで射的に熱中するヨヨさん

・魔の国にも射的(やあのへんの露店)は存在してて、原作でネネちゃんがやってるシーンがあったりする

・でもヨヨさんは底なしの魔力ゆえに小さいときに家族を離れておヨネさんのもとで修行してて、やっと終わると思ったら氷漬けのまま12年間……という人なので、そういうの体験してこなかったんだと思う(ヨヨさん自身「あんまり遊んだことないから」って言ってるし、動物園行きにはしゃいだりしてるし)。そこらへん微妙にせつないですね

 

 

■ 絵本級大魔法使いヨヨさん

・中華街での出来事にかすかな違和感を覚えたのか眠れないヨヨさんがトイレに起きてきた亜紀ちゃんに絵本を読んであげるシーン

・ここで読むのがヨヨさん主役の絵本『ヨヨと大海獣』

・亜紀ちゃんが絵本の最後の文を知っていて、ヨヨさんが「この世界にもヨヨの活躍は届いてるんですね」みたいに言う。これ、このときはこっちの世界でヨヨさんの絵本が出版されているというパラレルなつながり方をしてるのかなと思ったけど、これは亜紀ちゃんの母親が魔の国の人でしたという伏線だったんですね

・つまり、あれは母親のナオさんが魔の国の人だから、あきちゃんにとってはママにしてもらったお話とかなんだと思う。ナオさんは12年前に現代日本に飛ばされたらしいけど、12年前の剣魔大戦の時点(ヨヨさん当時6歳、氷漬けになる直前)でもヨヨさ ん絵本は出版されてたはずだし

・原作(『のろい屋姉妹 ヨヨとネネ』上巻、p.184)によるとヨヨさんの修行時代を描いた絵本シリーズは全10 巻(第10巻が12年前の剣魔大戦を描いたお話)。映画に出てくる『ヨヨと大海獣』はないものの1巻に『ヨヨと大怪獣』というのがあり、このふたつをイ コールとすればナオさんが読んでいてもおかしくない

・ちなみに設定によれば魔女の魔力は隔世遺伝するので亜紀ちゃん自身には魔女の素質はない、はず。もっともこっちの世界は魔力が拡散してしまうという設定だし師匠もいないのでそれ以前の問題になるけど

 

 

■ ずっとカエルのままだったニルス

・あんまり活躍せずマスコット的な感じだったニルス(マスコットとしてもビハクのほうが……)

・魔の国に転移してきた建物のせいでニルスが死んじゃって即蘇生。ここは魔の国での死の感覚を示すシーンだった

・カエルの姿になってるのは(ネネちゃんの)呪いのせいであり、その呪いは死ぬかネネちゃんにキスしてもらうかすると解けるはずなんだけど、死んだのに解けてませんでしたね

・まあ映画の中で急に人間の姿になられても観客をいたずらに混乱させるだけな気もしますしね

・もうひとつの解釈としては、死んだかのように思えたビハクが救急隊員の処置で蘇生した、つまり仮死状態だったというように、このニルスも死んだかに見えてまだ心肺蘇生すれば助かる状態だったのかも……というのも

 

 

■ ヨヨさんの魔法、そこまで暴走してなかった?

・全体的に原作と比べてヨヨさんあんまり魔法失敗してない気がする

・いや暴走するシーンはそれなりに多いんだけど、別の世界に来た&別の世界のものにかけてるからかなって感じもあったし、世界の特徴のせいで魔力が拡散してるってのもあったし

・原作で失敗が多いのは魔力が高すぎる&それを調律してもらってないからなので、もしかしたら今回はおヨネさんに調律してもらったあとの話だったりするのかな

■ すてきな映画でした

・映画になると聞いたときからずっと楽しみにしていたし、一年のしめくくりにすてきな映画を見られて嬉しかったです

・続編とかあるといいな!